実績紹介1
「日本酒醸造の発酵技術と(静電三法)物質変性法の応用」
●出展:「電子物性技術と大和流産業革命」メタモル出版社
●注:電子物性技術とは、静電三法に基づいた応用技術です。
●要約:
静電三法の物質変性法を応用すると最高の酒(大吟醸他)ができ、経営効率も向上します。もっとも難しい辛口の酒も、アルコールの直接的な刺激のない、まろやかなコクときれのある最高の酒になります。また、仕込みから熟成にいたる発酵の効率が非常に良くなり、酒粕等の原料効率が向上します。
●日本酒は、水と発酵そのものが命
「静電三法」の物質変性法の活用では、あらゆる発酵食品に応用可能です。特に発酵そのものが生命である酒造りの成功事例を紹介します。酒造りの命を決するのは水の質です。昔から「灘の生一本」として高く評されてきした兵庫県・灘の名声は、六甲山の麓から湧き出る最上質の"宮水"があってこそのものでした。とはいえ、水の質の低下は、今や日本全国どこでも話題になる問題です。したがって、各地の酒造メーカーは、良質の水を確保することにきわめて敏感になっています。
岐阜県各務原市の酒造メーカー菊川株式会社の岐阜工場では、1992年(平成4)12月に、2トンタンクの電子水製造装置(半自動制御)を中心とする電子物性技術を導入・稼働しました。菊川では、電子水導入以前から、水の質については大変な気を使ってきたといいます。灘の水に合わせてみようと、灘の水と菊川岐阜工場の使ってきた水との成分を比較分析したり、双方を合成したりと、たゆみない研究と工夫を重ねています。しかしどんなに努力したところで、灘の水に匹敵する水を確保することはできなかったそうです。そればかりでなく、菊川岐阜工場の使用する水源周辺に団地ができたり河川の改修が行われたため、菊川の井戸の水質は、昔にくらべると明らかに変化してしまっていました。これが酒造メーカーにとって死命を決しかねない問題であったことは、いうまでもありません。そうした悩みを抱え続けてきた中、菊川の常務で岐阜工場長を務めていた加藤軍司さん(現顧問)は、岐阜県の工業技術セソターが発行した冊子の記事で電子水を知ります。
これをきっかけに電子物性総合研究所を訪れた加藤さんは、以来、研究所から持ち帰った電子水で酒を仕込んでみたり、製品となった酒を研究所に持ち込んで電子チャージしてみたりと、さまざまな実験を重ねました。その結果がどれも期待以上だったといいます。したがって菊川が電子物性技術を導入したのは、確信あってのことだったのです。
●●●「水分子のクラスターが小さくなる」と酒がまろやかになる
さて、水についての研究では第一人者といわれる"生命の水研究所"の松下和弘所長は、水の権威であると同時に「無類の酒好き」を自認されています。松下さんは、水の質を評価するにあたって、旧来の溶解ミネラル成分のみに頼る手法を批判しながら、現在では広く知られるようになった。
「水分子のクラスター(分子集団)の大小が、美味しさや健康への寄与を左右する最大の要素だ」という理論を提唱した人ですが、その理論を発表した最初のテーマが、実は「美味しい酒は、なぜ美味しいのか」についての研究成果でした。酒はそれがどんな種類の酒であれ、基本的にはエチルアルコールと水との混合物です。酒の種類によって香りなどを左右する様々な成分がありますが、どの場合にもエチルアルコールと水が主要成分であることに変わりはありません。
ところで、どんな種類の酒を評価する場合でも、酒の美味しさの基準には"まろやかさ"という言葉がつきまといます。
「いったいこの、まろやかさとは何か」というところに焦点を当てたのが松下さんの研究の主眼でした。
ウイスキーやブランデーは典型的な例でしょう。これらの熟成酒は長い期間"寝かせる"ことによって、よりまろやかな酒になるとされます。では"寝かせ"ている間に、酒の中ではどんな変化が起こっているのでしょう。
松下さんが明らかにしたのは、その変化の主役が「水分子のクラスターが小さくなること」でした。つまり、"寝かせ"ている間に水分子のクラスターが小さくなると、アルコール分子が水分子によってきれいに包み込まれることになり、その結果、アルコール分子が味覚を直接刺激することがなくなって"まろやか"になる、という事実でした。松下さんがこの見解を最初に発表したのは、1990(平成2)年の日本化学会の席上でした。
しかしこの松下さんの発表に対して、当時はまったくといって意味のある反応はなかったといいます。同会に出席していた研究者たちは、具体的なデータを検討する以前に、「そんなことはあり得ない。水はあくまでもH2Oでしかないし、水の変化が酒の味を左右するはずなどない」と一顧だにしなかったと聞きます。
今にして思えば、それも無理からぬことだったかもしれません。というのも、水の分子構造を分析するためにNMR(核磁気共鳴装置)という先端機器を活用していたのは、日本では松下さんが最初だったからです。他の研究者たちは、水の分子レベルでの構造を知ろうにも、その方法がなかったということです。
ではそれから数年を過ぎた現在ではどうかといえば、松下さんの提唱した「水のクラスターと酒のまろやかさの関係」の理論は、醸造学研究における有力な理論として評価され定着しています。
●●●水の状態が酒の味を左右する
ところで、酒を寝かせる、すなわち熟成させることでまろやかになる理由が、水のクラスターの変化であることを認めるなら、酒造に使う水そのもののクラスターが小さければ、より美味しくまろやかな酒ができると考えるのが自然です。
では電子水はどうかといえば、これはこの世に存在する水の中でも、もっともクラスターの小さい水のひとつであることが、松下さんの分析結果でも証明されています。ここで菊川の造る酒の話に戻りましょう。
菊川の酒は、以前から辛口の酒と知られていたそうです。しかし辛口の酒とは、酒の中でももっともむずかしい酒だといいます。辛口でありながら、アルコールの直接的な刺激のない酒を造るのは至難の技だからです。電子水を導入した菊川は、この点でめだった成功を収めました。切れのいい辛口の味わいをそのまま残しながら、ピリッと舌を刺すよう刺激をすっかり除くことができたのです。辛口でありながら、しかもまろやかでコクのある酒。菊川は、そんな理想の酒を実現してしまいました。 |
現在、菊川では、仕込みと割り水の両方に電子水を使っています。それぞれの場面での電子水の効果についての加藤さんの見解をご紹介しておきましよう。
「電子水で仕込むと、それまでの水に比べて、仕込んだ当初の発酵は遅いですね。しかしその後に急に発酵が速やかになり、いつまでも持続するんです。全体的にみれば、発酵から熟成までの時間が短縮されました。
また、以前は酒粕が少なくなったときにはいい酒ができなかったのに、電子水を使うようになってからは、酒粕が少なくなってもいい酒ができるようになりました。これは興味深い現象です」総じていえば、仕込みから熟成にいたる発酵過程の効率が非常に良くなったというのです。
では、アルコール度数で20度ほどに仕上がる原酒を、市販されている普通の清酒の15-16度に整える割り水に電子水を使うと、どういう変化があるのでしょう。
「電子水を使うと、いわゆるまろやかな味、口当たりの良い製品になります。これは最初から予想していたことでした。味が丸くなって舌にピリつかなくなるんです。これは水のクラスターが小さいと、アルコールの分子が水によく混ざり込むためと考えられます。 |
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菊川の岐阜工場と電子水製造装置。
菊川の大吟醸は秀逸の味
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また、焼酎甲類は95%のアルコールを水で薄めて造るのですが、その水のクラスターが大きいとアルコールの刺激臭が強く、ピリつきます。その反対にクラスターが小さ過ぎると、シャンとしたところがなくダレてしまうことが判明しました。その中間の水を使いますと、まろやかでシャンとしたキレのよい焼酎となります」酒の味とは、まことにデリケートなものだと思います。いいかえるなら、水の状態一つが、酒の味を決定的に左右するということにほかなりません。
ちなみに菊川は高級酒である大吟醸を『美濃地酒・篭火・いやしろの里/長良新水.電子水仕込一と銘打っ賑売しています。単なる呑み助ではない酒好きを自認するなら、この酒の味ばかりは是非とも一度は味わってください。細やかです。しかも芳醇です。それでいて切れがあります。
ここ数年、日本酒は全般に昔日の本物の味を取り戻し、それにつれて日本酒のブームが疑われた時期もありました。そんな中で市場に氾濫した"旨い酒"の中でも、菊川の大吟醸は秀逸の一つに違いありません。 |
●●●発酵を促進しながら腐敗を抑制する
さて、酒造りにおける発酵とは、発酵菌を介して行われる化学反応です。その一方で腐敗もまた腐敗菌によって行われる化学反応です。電子物性技術のおもしろさをきわめて大まかにいうなら、細菌が行う有用な化学反応である発酵を促進しながら、不都合な化学反応である腐敗は抑制する、というところにあります。この点をよりよく理解していただくために、科学的な研究の結果をご紹介しておくことにしましよう。
以下は、筑波大学・応用生物化学系教授・向高祐邦工学博士が、人の体の中でも生命活動の要のところで化学反応を支えている酵素の働きと電子水との関係を明らかにした上で結論として述べている言葉です。
「電子水利用の有意性についてはすでに多くの分野で実証されているが、酵素反応を促進するという事実から考えて酵素および微生物、動・植物細胞の利用分野では、反応や発酵過程のスピードアップが期待される。(略)パン生産現場で使用されているイースト発酵について電子水と水道水での発酵速度を比較すれば・ガス発生速度の差に見られるように電子水利用の方が明らかに発酵が速く進行している。これは一つの例にすぎないが、酵素や微生物、動・植物細胞は、食品、医薬品、化学薬品などの生産分野で特に利用され、今なお、バイオテクノロジーの進歩に伴いその用途は広がっている。このようなとき、電子水の利用を併せて進めることは、生産性の向上をもたらすと期待される。 −略− 電子水は味の改善、保湿性の向上などの効果をも併せもつといわれている。電場処理は電気エネルギーをそれ程必要とせず、家庭や産業レベルでも受け入れやすい処理法と考えられる。これらの点からもおおいに利用を試みるべきであろう」(会誌『電子物性』より)
ここで向高博士が「電場処理は電気エネルギーをそれ程必要とせず」と述べているのは、電子物性技術を生産現場あるいは家庭生活の中に導入して使用した場合に、それを稼動させるための運転コストがきわめて小さいことを示しています。
電場処理、すなわち電子をチャージするという処理は、たとえば電灯やテレビや冷蔵庫を働かせるときのように電流を流すものではありません。物質に電子を附加するために要する電気エネルギーは、きわめて微弱なものです。
したがって、仮に一般家庭で電子水製造装置や電子チャージボックス(食品などに電子をチャージする装置)などをフルに活用したとしても、電気代に占める割合はほとんど無視できる程度です。生産工場での場合もほぼ同様と思って間違いないでしょう。
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