2.炭素埋設の実例紹介
ここからは、岐阜県各務原市で炭素埋設と敷炭を当研究所の指導で実施し、その効果を期待されている吉田様にご協力を頂き、取材した炭素埋設の施工方法とその様子を報告致します。また、今回は炭素埋設の効果をより高めるための敷炭という方法も行いましたので併せて順次ご紹介致します。
@炭素埋設箇所を決定する
静電三法によると炭素埋設を行う場所(炭素埋設箇所)は、“相似象的観測”で家屋の位置及びその周辺地域の電位傾向を判断し、炭素埋設位置と埋設箇所数を決めます。具体的な方法を以下に説明します。
炭素埋設箇所は、一辺が最大で50mまでの正三角形の頂点位置と定められています。そこに、穴(炭素埋設孔)を掘り炭素を埋めます。今回のケースでは住居が既に完成していたため、図のような家屋の周り3箇所で住居スペース全体をカバーできる地点を炭素埋設箇所としました。より厳密には、その土地の各部の地電位を測定し、劣勢線、電位傾斜等の有無を確認するのがよいのですが、一般的には、住居スペースを半径15m以内でカバーできる位置で問題ありません。なお、炭素埋設箇所A−B、B−C、C−A間の距離は約12mでA,B,Cが正三角形の頂点位置になります。相似象及び地形的に優勢区域の方向にあるA点を起点としてB点、C点を敷地内で計3箇所の炭素埋設位置を決めました。 |
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炭素埋設個所 |
A炭素埋設孔を掘る
次に各炭素埋設箇所に炭素埋設孔を掘りますが、静電三法によると直径3尺(約90cm)、深さ3尺(約90cm)もの穴を掘る必要があります。この時点で足踏みしてしまう方が多いと思いますが、人手が十分足りているか、小型重機(ユンボ)が手配できるのであれば、是非、頑張って穴を掘ってもらえればよいかと思います。尚、今回の穴掘りは労力のかからないユンボで行いました。また、写真に写っています銀色の桶のようなものは、炭素埋設を手早くきれいに行うために当研究所が開発した専用金具です。新築であれば、基礎工事屋さん、外構工事屋さんにお願いすれば手間が省けます。
A-1
ユンボで穴堀り
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A-2
炭素埋設用金具を入れる
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A-3 金具の外観
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B炭素埋設孔に炭素粉を投入する
炭素埋設孔を掘り終えましたら、いよいよ炭素を投入し埋設します。静電三法には炭素の埋設量は炭素埋設孔に1尺(約30cm)の厚さになるよう埋めるとありますが、この量は実際にはセメント袋で10袋分(約200kg)程度に相当します。そして炭素の材料ですが、木炭あるいは燻炭がよいとあります。今回の炭素は奈良県にある炭メーカーの炭素埋設用の粉末状木炭(炭素粉)を使用しました。吉田邸での使用量は1個所15袋(約300kg)、3個所合計45袋分(約900kg)の炭素粉を使用しました。
さて、袋を切り炭素粉を次々と穴に投入していきますが、ここで、上記のような金具を用いれば簡単に形状が整いとても便利です。金具は炭素を投入する前に大きく広めに掘った炭素埋設孔に位置を決めて、予め入れ金具の周りの土を埋め戻しておくのですが、投入した炭素粉の形が崩れず、きれいな円柱形状に固めることができます。
B-1
用意した炭素粉の袋
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B-2
炭素粉を埋設孔に入れる
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C炭素粉を固める
炭素粉を投入した後は、炭素層は周囲の土壌と一体化し強固にするため十分な散水による炭素粉の締め固めをします。十分な水の供給は、地中のイオンの流動性を増し、炭素埋設の効果を高めるためには必須です。締め固めを行う前の炭素層の深さは50cm以上にもなるため、お風呂に水を入れるくらいに大量の水が必要になります。炭素埋設孔の底までしっかりと水が染込み、炭素層の表面に水がたまるまでたっぷりと水を染込ませます。このとき炭素層を太い棒で突きながら行うと中間部まで早く確実に水を染込ませることができます。 |
C 炭素粉のしめ固め |
D土を戻し炭素埋設完了
水を十分に染込ませ炭素粉を固めたら金具を抜き取ります。するとご覧の通り、大変美しい円柱状の炭素塊が出来上がります。仕上げはこの炭素塊の上部に土を戻し地面を固めればまずは1個所完成です。続いて残る2個所も同様の作業を行えば施工完了です。
D-1 金具を引き抜く
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D-2 金具を引き抜いた後
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D-3 埋設孔を埋める
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D-4 埋設後の状態
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いかがでしたでしょうか。炭素埋設のやり方を要約しますと、
@ 炭素埋設の場所を決め(これが一番重要)、
A 穴を掘り
B 炭素を入れ水で締め固め
C 土を埋め戻す
という作業内容で、多少の力仕事は必要になりますが大変シンプルな作業で済みます。楢崎皐月は静電三法の中で炭素埋設法について、第8章 観測に係わる技術(p170)の中で1.劣勢線(帯)の観測技法(場所決め)を紹介した上で、その劣勢線(帯)を改善する方法として2.炭素埋設技術(p175)を説明しています。炭素埋設のご興味のある方はこのレポートと共に、是非、読み直してみて下さい。
炭素埋設の場所(位置)の決め方には多少の経験が必要ですが、穴を掘り、炭素を入れるという作業は専門家のみしか出来ない難しいものではなく、誰もが出来る容易な方法であることがわかります。炭素埋設の効果は施工後すぐに実感できるものではありませんが、経年変化(イヤシロチ化)をご自身の体調、ご家族の健康、庭木等の生育で、1〜3年後にははっきりと実感できるはずです。吉田邸の変化も継続的に調査しレポートしていきたいと思いますのでお楽しみにして下さい。
次回は、建築の基礎工事の段階で行う炭素埋設と併用し、その効果をより高める方法としての敷炭ついて報告します。
(編集 大塚啓恵)
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